この記事では、膣内射精障害についての基本的な考え方や、よくある誤解について解説します。
「膣内射精障害」という言葉を初めて目にして、戸惑いを感じている方もいるかもしれません。この記事では、2025年度版男性性機能障害診療ガイドラインに基づき、膣内射精障害とは何か、なぜ起こるのか、どう向き合えばよいのかを、できるだけわかりやすく整理してお伝えします。
膣内射精障害とは?
定義
膣内射精障害とは、次のような状態を指します。
- マスターベーションでは射精できる
- 勃起もある程度保たれている
- それにもかかわらず、性行為中にパートナーの膣内では射精できない
重要なのは、必ずしもED(勃起障害)を伴うわけではないという点です。実際には、勃起はできるが膣内で射精できない方もいれば、EDも合併している方もいます。どちらのケースも膣内射精障害に含まれます。
日本でよく使われる診断名
実は「膣内射精障害」という名称は、日本で広く使われている分類名です。国際的な病名分類(ICD-11)では「遅漏(Delayed Ejaculation)」や「射精障害」といった枠組みの中に位置づけられています。つまり、日本独自の呼び方ではありますが、世界的にも同じ病態は認識されているということです。
なぜ起こるのか?原因の整理
専門書では、膣内射精障害の原因としていくつかのパターンが挙げられています。ここでは代表的なものを見ていきましょう。
①マスターベーション習慣との関連
最もよく言及されるのが、マスターベーションの刺激に体が慣れすぎてしまうケースです。
ここで使われる「不適切なマスターベーション」という言葉は、倫理的・道徳的な意味ではありません。医学的には、次のような刺激パターンを指しています。
- 非常に強い圧迫や摩擦
- 特殊な姿勢(ベッドや枕に擦りつけるなど)や手以外の物を使った刺激
- 特定の体勢や環境でしかできない
- 刺激が単調・特殊すぎる
こうした刺激に長年慣れることで、膣内刺激では十分な快感が得られにくくなると考えられています。これは体と脳が学習した結果であり、意志の問題ではありません。
特に、特殊な姿勢での刺激に慣れたケースは専門用語で「TMS(Traumatic Masturbatory Syndrome)」と呼ばれ、オーガズムを感じにくくなったり、EDや性欲低下を伴うことがあると報告されています。ただし、これは「誰でもなる」「必ずそうなる」という話ではなく、一部のケースで報告された病態です。が得られにくくなると考えられています。これは体と脳が学習した結果であり、意志の問題ではありません。
②妊活の「タイミング法」がきっかけになる場合
不妊治療の過程で膣内射精障害が顕在化するケースも少なくありません。
- 排卵日に合わせて射精しなければならないというプレッシャー
- 失敗できないという緊張感
- 「今日は義務」という意識
こうした心理的負担が続くことで、射精がうまくいかなくなることがあります。これは決して珍しいことではなく、多くのカップルが経験する問題です。
③性的刺激の条件が限定されている場合
次のような条件が重なると、パートナーとの性行為では反応しづらくなることがあります。
- 特定の映像や画像がないと興奮できない
- 特定の環境でないと集中できない
- 一人の状況でないとリラックスできない
これは性的刺激の学習パターンが限定的になっている状態といえます。
ここで大事なポイント
膣内射精障害は「気合い」や「根性」の問題ではありません。体と脳が、ある刺激パターンに学習している結果であることが多いのです。だからこそ、次の点が重要になります。
- 責めるべき問題ではない
- 一気に治そうとするものでもない
- 正しい理解と段階的な対応が必要
治療・対応の考え方
膣内射精障害への対応は、原因や状況によって異なります。一般的には次のようなアプローチが考えられます。
- 原因の整理:どのようなパターンで起こっているのかを把握する
- マスターベーション習慣の見直し:刺激の強さや方法を段階的に調整する
- 心理的プレッシャーの軽減:妊活やパートナーシップの問題に向き合う
- 必要に応じた医療介入:泌尿器科や性機能専門医への相談
「これをすれば必ず治る」という単純な話ではありません。個々の状況に応じて、適切な対応を組み合わせていくことが大切です。
医療機関への相談を検討するタイミング
自分なりに工夫してもなかなか改善しない場合、妊活で困っている場合、パートナーとの関係に影響が出ている場合は、泌尿器科や性機能専門外来への相談を検討してみてください。
まとめ
膣内射精障害は、体と脳が特定の刺激に慣れた結果として起こることが多く、妊活やプレッシャーが引き金になることもあります。これは責める問題ではなく、医学的に整理して対応するべき状態です。
一人で抱え込まず、必要に応じて専門家の力を借りながら、焦らず段階的に向き合っていくことが大切です。
参考文献
日本性機能学会・日本泌尿器科学会編『2025年度版 男性性機能障害診療ガイドライン』

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