膣内射精障害やEDには、薬剤の影響や基礎疾患が関与して起こるタイプがあります。このタイプは、本人の努力や工夫だけでは改善しにくいという特徴があるため、まず「背景に何があるのか」を見逃さずに整理することが重要な対応になります。
この記事では、ガイドラインやエビデンスに基づいて、薬剤・基礎疾患が関与する膣内射精障害とEDについて解説します。
薬剤の影響が疑われるケース
以下は、射精障害・EDの両方に影響しうると、国内外のガイドラインや総説で繰り返し言及されている薬剤群です。
抗うつ薬・向精神薬
特に注意が必要なのは以下の薬剤です。
■ SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)・SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
代表的な薬剤:
- パロキセチン(パキシル)
- セルトラリン(ジェイゾロフト)
- フルボキサミン(デプロメール、ルボックス)
- エスシタロプラム(レクサプロ)
- デュロキセチン(サインバルタ)
性機能への影響:
- 遅漏・射精困難
- 性欲低下
- ED(勃起機能の低下)
射精障害とEDが同時に起こることも珍しくありません。
■ 抗精神病薬
高プロラクチン血症を介して、以下のような症状が生じることがあります。
- 性欲低下
- ED
- 射精障害
⚠️ 重要な注意事項
自己判断での中止・減量は絶対にしないでください。精神科・心療内科で処方されている薬剤を急に中止すると、離脱症状や病状の悪化を引き起こす可能性があります。
症状がある場合は、まず処方医に「性機能への影響が気になっている」ことを伝えることが第一歩です。
降圧薬・循環器系薬剤
以下の薬剤がEDに関与することが知られています。
- 一部のβ遮断薬(高血圧や不整脈の治療に使用)
- 一部の利尿薬(降圧目的で使用)
EDをきっかけに、結果として膣内射精が難しくなるケースがあります。ただし、すべての降圧薬が性機能に影響するわけではなく、種類によって影響の程度は異なります。
その他の薬剤
- 前立腺肥大症治療薬の一部(特に5α還元酵素阻害薬)
- 抗アンドロゲン作用をもつ薬剤
これらも性機能に影響する可能性が指摘されています。
基礎疾患が関与しているケース
糖尿病
糖尿病は、膣内射精障害とEDの両方が起こりやすい代表的な疾患です。
メカニズム:
- 末梢神経障害(射精反射や感覚の伝達が障害される)
- 血管障害(陰茎への血流が低下し、勃起の質が悪化する)
膣内射精障害とEDの併発タイプでは、背景に糖尿病があるケースは少なくありません。特に血糖コントロールが不良な期間が長いほど、神経障害・血管障害のリスクは高まります。
高血圧・脂質異常症・動脈硬化
これらの疾患は、陰茎血流の低下を引き起こし、勃起の質を低下させます。
EDが先行し、その結果として射精まで到達しにくくなることがあります。EAU(欧州泌尿器科学会)ガイドラインでも、EDは全身の血管状態のサインとして扱われており、心血管疾患の早期発見につながる場合もあります。
神経疾患・神経障害
以下のような状態で射精反射そのものが影響を受けることがあります。
- 脊髄疾患(脊髄損傷、多発性硬化症など)
- 多発神経障害
- 骨盤内手術後(直腸がん手術、前立腺全摘術など)
特に骨盤内の手術では、射精に関わる神経が物理的に損傷を受けるリスクがあります。
内分泌異常
ホルモンバランスの乱れも性機能に大きく影響します。
- 低テストステロン血症:性欲低下、ED、射精障害が複合的に起こる
- 高プロラクチン血症:性欲低下、EDの原因となる
- 甲状腺機能異常:機能低下・亢進ともに性機能に影響しうる
このタイプでの改善の優先順位
改善のステップ:
- 原因因子の可視化(薬剤・疾患の整理)
- 処方医・主治医と情報共有
- 性機能への影響を踏まえた調整(可能な範囲で)
- そのうえでED・射精側の介入を検討
重要なのは、「治そうと頑張る」より先に、「邪魔をしている要因を減らす」という視点です。
併発タイプ別・やってはいけない対応
薬剤が関与している場合
❌ やってはいけないこと
- 自分の判断で薬を中止・減量する
- 「副作用だから仕方ない」と諦めて我慢し続ける
- 性機能の話題を主治医に出さない
✓ 適切な対応
- 処方医に「性機能への影響が気になる」と率直に伝える
- 薬剤の変更や調整が可能か相談する(種類によっては性機能への影響が少ない薬剤もあります)
- 必要に応じて泌尿器科や性機能専門医への紹介を依頼する
糖尿病が関与している場合
❌ やってはいけないこと
- 血糖コントロールを疎かにする
- 「年齢のせい」と決めつけて放置する
- 神経障害・血管障害の進行を見逃す
✓ 適切な対応
- まず血糖コントロールの最適化を図る
- 糖尿病専門医に性機能の問題を相談する
- 神経障害・血管障害の評価を受ける
- 場合によってはPDE5阻害薬(バイアグラ、シアリスなど)の使用も検討する
循環器疾患が関与している場合
❌ やってはいけないこと
- EDを「単なる加齢」として見逃す
- 循環器の治療を中断する
- 勝手にED治療薬を入手して使用する
✓ 適切な対応
- 循環器専門医にEDの症状を伝える(全身の血管状態の指標として重要)
- 降圧薬の種類について相談する
- 循環器の状態を考慮したうえで、ED治療薬の使用可否を判断してもらう
神経障害・手術後の場合
❌ やってはいけないこと
- 「手術したから仕方ない」と諦める
- リハビリテーションの機会を逃す
- 専門的な評価を受けずに自己判断する
✓ 適切な対応
- 手術を担当した医師や泌尿器科医に相談する
- 神経温存の程度や回復の可能性について情報を得る
- 必要に応じて早期からのリハビリテーション(陰茎リハビリ)を開始する
- 補助的な治療法(注射療法、真空式器具など)についても情報を得る
専門医への相談を検討するタイミング
以下のような場合は、泌尿器科や性機能専門医への相談を検討してください。
- 複数の薬剤を服用していて、どれが影響しているか分からない
- 処方医に相談したが、薬剤の変更が難しいと言われた
- 基礎疾患の治療をしているが、性機能の問題が改善しない
- パートナーとの妊娠を希望しているが、膣内射精が困難
- 症状が徐々に悪化している
まとめ:薬剤・基礎疾患タイプの膣内射精障害・ED
- 膣内射精障害やEDは、薬剤や基礎疾患が「土台」になって起きていることがある
- このタイプは、工夫やトレーニングだけでは改善しにくい特徴がある
- だからこそ、医療者と情報を共有し、背景を整理すること自体が治療の一部になる
- 自己判断での薬剤中止や放置は避け、適切な医療機関に相談することが重要
- 性機能の問題は恥ずかしいことではなく、適切に評価・対応すべき医学的な問題である
参考文献:日本性機能学会ガイドライン、EAU(欧州泌尿器科学会)ガイドライン、各種医学文献
※この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断や治療を行うものではありません。症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。

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