膣内射精障害、病院ではこう治す|4段階の行動療法と1年で自然妊娠した症例

「病院に行ったらどんな治療を受けるのか」「どのくらいで改善するのか」——膣内射精障害を抱える方から、こうした疑問をよく聞きます。この記事では、日本性科学会の学術集会で発表された実際の症例報告をもとに、専門医による膣内射精障害の診断から治療の流れ、そして結果までを詳しく解説します。病院受診を検討している方に、具体的なイメージをお伝えできれば幸いです。

1. まず確認されること:挙児(子どもを望むか)の希望

膣内射精障害は男性不妊の原因のひとつとされています。そのため、受診時にまず確認されるのが「子どもを望んでいるかどうか」です。

🍼 挙児を希望する場合
膣内射精障害の改善治療と並行して、一定期間で効果が見られない場合は不妊治療の提案や他院への紹介が入ることがあります。時間的な優先度が高くなるため、早期受診が重要です。
🧭 挙児を希望しない場合
性生活の改善・パートナーとの関係向上を目的に、時間をかけながら行動療法・心理療法を中心に進めていきます。焦らず取り組める環境が整いやすい状況です。
挙児を希望しているにもかかわらず膣内射精障害が長期化すると、不妊の直接原因になります。厚生労働省の調査では、不妊治療を受けている男性のうち射精障害が原因の割合は7.4%とされており(※1)、男性不妊の中でも無視できない割合を占めています。

2. 病院が考える膣内射精障害の原因分類

専門医が最初に行うのは、膣内射精障害の原因の特定です。大きく2種類に分類されます。

原因①
不適切なマスターベーション習慣
床オナ・壁オナ・足ピン・強グリップなど、膣内の刺激と大きく異なる方法に慣れてしまったケース。マスターベーションエイド(専用トレーニング器具)を用いた射精リハビリが有効とされています。研究では対象者16名のうち75%がトレーニング器具での射精に成功したという報告もあります(※2)。
原因②
心因性(精神・心理的な要因)
不安・プレッシャー・過去のトラウマ・アダルトコンテンツへの過剰な慣れなど。心因性については有効な方法がまだ確立されておらず、専門医それぞれが試行錯誤しながら対応しているのが現状です。行動療法と心理療法を組み合わせたアプローチが多く用いられています。
▶ 現場から

実際に膣内射精障害に悩む方の多くは、この2つの原因を同時に抱えています。マスターベーション習慣を改善しただけで解決するケースもありますが、多くの場合は心因性の要素も絡んでいます。

3. 実際の症例:37歳男性のケース

具体例をもとに、実際の受診から治療の流れをご紹介します。

CASE
37歳男性・妻29歳・挙児希望・結婚後に初めて性行為
これまでの性的な経緯(問診で判明)
  • 小学校高学年時に床オナを経験(射精はなし)
  • マスターベーションは強グリップで習慣化していた
  • トレーニングカップを試したが膣内射精には至らなかった
  • アダルトコンテンツはハードな内容のものに慣れていた
  • 妻が初めての性的パートナー
受診時の性機能の状態(問診で判明)
  • 朝立ちあり(早朝勃起)、勃起能力に問題なし
  • ED治療薬の使用なし
  • マスターベーションで射精可能(所要時間10分、週2回)
  • 性行為中に「うまくいくか常に緊張」「相手が満足しているか心配」「射精できず傷つけてしまったら」という不安が強い
▶ 所見
朝立ちや自慰での射精が可能なことから、身体的な機能に問題はなく、不適切なマスターベーション習慣+心因性の複合ケースと判断されました。性行為中の不安・プレッシャーは、膣内射精障害を抱える方に非常によく見られる共通パターンです。

4. 専門医が行った治療の内容

担当医は、「心因性」と判断し、以下の治療方針を組み立てました。

まず行われた環境の調整
アダルトコンテンツをハードな内容から別の内容へ変更するよう提案。また視聴の回数も制限しました。性的な興奮のトリガーを実際の性行為に近づけるための準備段階です。
行動療法:4ステップの段階的アプローチ

その後、以下の4段階の行動療法が進められました。3〜4週おきに実施し、進捗が滞ると心理療法を組み合わせていく方針でした。

1
センセートフォーカス法(感覚焦点法)
膣内への挿入を禁止した状態で、タッチングによるふれあいから始めます。「射精しなければ」というプレッシャーをゼロにし、パートナーとの感覚的なつながりを取り戻すことが目的です。
2
挿入はするが「射精を目指さない」
挿入は許可しますが動かさず、射精を目標にせずさまざまな体位を試します。「挿入している状態」に体を慣れさせることが目的です。
3
膣外射精の許可
挿入後、射精しそうになったら弱いグリップでスラスト(上下の動き)を行い、パートナーの前で膣外射精をします。「パートナーの前で射精する」という経験を積む段階です。
4
膣内射精へ
挿入後、勃起を維持する程度に動かし、射精が近くなったら自由に動かして膣内射精を目指します。ここまで来て初めて「膣内射精」をゴールとして設定します。
心理療法との併用
この病院ではカウンセリングルームと共同で治療を行い、行動療法と心理療法を両輪で進める体制が整っていました。行動療法の進捗が滞った段階で心理療法を組み合わせるという運用です。身体と心の両面からサポートを受けられる環境は、改善の大きな後押しになります。

5. 治療の結果

この症例の治療結果は以下の通りでした。

3回目
行動療法
膣外射精に成功
パートナーの前で射精できるという経験を積めた段階。
5回目
行動療法
膣内射精に初めて成功
治療開始からおよそ3〜4ヶ月後。
7回目
行動療法
膣内射精がほぼ安定
継続的に膣内射精できる状態へ。
10回目
約1年後
✨ 自然妊娠を確認
治療開始から約1年で、最終的な目標であった自然妊娠を達成しました。
▶ この結果から読み取れること

専門病院での治療でも、膣内射精ができるようになるまでに半年ほどかかっています。これは決して遅い結果ではなく、むしろ「それだけ時間をかけて段階的に改善していくものだ」というリアルな目安として受け取ることができます。焦りは禁物です。

まとめ:病院受診で知っておきたいこと
  • 受診時はまず「挙児を望むかどうか」が確認され、治療方針が変わる
  • 原因は「不適切なマスターベーション習慣」と「心因性」の2種類に分類されるが、多くは両方が絡んでいる
  • 心因性の膣内射精障害に対する確立した薬物療法はなく、行動療法・心理療法が中心になる
  • 行動療法は4段階の段階的なアプローチで進められ、3〜4週おきに実施されることが多い
  • 心理療法も取り入れている病院かどうかが、受診先を選ぶ際のひとつの判断材料になる
  • 専門病院でも膣内射精まで半年、自然妊娠まで1年かかることもある。長期戦を覚悟したうえで早めに動くことが大切
  • 挙児を希望している場合は特に、早期の専門医受診を検討する価値がある

参考・引用
  1. 厚生労働省「男性不妊に関する調査結果」(射精障害の割合)
  2. 小堀義夕 他「マスターベーションエイドを用いた膣内射精障害のリハビリテーション」CiNii Research
  3. 新宿ライフクリニック「膣内射精障害の行動療法と薬物療法」(心因性の現状と治療方針)
  4. CLINIC FOR「膣内射精障害とは?原因・対処法・治療法などを詳しく解説」(厚生労働省7.4%のデータ)
  5. 日本性科学会学術集会 症例報告(37歳男性・センセートフォーカス法による治療経過)
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